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解説

自治体が公表する「まちの通信簿」とは — もう一つの視点

自治体が公表する「まちの通信簿」

毎年春から夏にかけて、日本のどこかの自治体が「自分の街の採点結果」を公表しています。住民アンケートを集計し、施策ごとに満足度と重要度を整理して市民に報告する。「まちの通信簿」と呼ぶ街もあれば、「市民満足度調査」「市民意識調査」と呼ぶ街もあります。形は様々ですが、どれも同じ問いから始まっています。「私たちの街は、今どんな状態にあるか」。

文 ・ 丘田 ちひろ / 街の通信簿 移住・街選び AI ライター2026 年 6 月公開
🏙はじめに — もう一つの「通信簿」導入

当サイト「街の通信簿」は、市区町村を第三者の視点で診断するメディアです。一方で、自治体自身も、総合計画の進捗評価や住民満足度調査という形で「自分の街を採点する」取り組みを続けています。 このページでは、その自治体側の営みを紹介します。「どちらが正しいか」という話ではありません。外から数字で見た姿と、内から住民の声で描いた姿。同じ街を異なる視点で見る2つの通信簿を、敬意を持って並べてみたいと考えています。

📋なぜ自治体は「自分の街を採点する」のか背景

日本の市区町村は、将来のまちの姿と施策の方向性を定める「総合計画」を独自に策定しています。かつては地方自治法が基本構想の策定を義務付けていましたが、2011年の改正でその法的義務は廃止されました。それでも現在に至るまで、ほぼすべての市区町村が総合計画を継続して策定・更新しています。複数の部署にまたがる施策を体系的に束ね、住民や議会への説明責任を果たすには、計画という土台が必要だからです。 総合計画の多くは10年前後を見据えた「基本構想」と、それを実現する「基本計画」「実施計画」の層構造で組まれています。計画を立てるだけで終わらせず、毎年度の進捗を確認して改善につなげる仕組みが「行政評価」です。 なかでも、住民アンケートで施策への満足度や重要度を定期的に測る取り組みは、評価の客観性と説明責任の両面で意義があります。「まちの通信簿」という名称には、難しい行政用語ではなく住民が読んで分かる言葉で届けたい、という意図が透けて見えます。

🗂取り組みの4つの類型分類

全国の自治体が実施する自己評価の取り組みは、大まかに4つの類型に整理できます。それぞれ「何を・どう測るか」の設計が異なり、見えてくる街の姿も変わってきます。 ① 総合計画進捗評価型 総合計画に定めた施策・指標の達成状況を行政が自ら評価し、報告書として公表するタイプ。評価軸は計画に設定された成果指標で、数値で進捗が可視化されます。(例: 尼崎市・大津市) ② 住民満足度・重要度調査型 住民を無作為抽出してアンケートを実施し、施策ごとの満足度と重要度を測定するタイプ。横軸を満足度・縦軸を重要度とした4象限で「重要だが満足が低い項目」を可視化し、優先課題を導く手法が多く見られます。住民の実感を一次データとして集める点が①と異なります。(例: 関市・天童市・長崎市・多賀城市) ③ 事務事業評価型 個々の事業ひとつひとつについて、目的・対象・効果・コストを整理し、継続・見直し・廃止の方向性を評価するタイプ。施策レベルで見る①より細かい事業の粒度まで降りて検証します。(例: 千歳市) ④ 住民参加ワークショップ型 アンケートではなく、住民が直接まちの課題や優先施策を議論する場で意見を収集・反映するタイプ。総合計画の策定・改定時に集中して実施されることが多く、近年はオンライン参加や若年層への働きかけも取り入れられています。

📊実在する取り組みの一覧事例

下記は、当サイトが各市区町村のページで紹介している取り組みです。市区町村名をタップすると、その街のページの該当ブロックへ移動します。いずれも公表ページの実在を確認したうえで掲載しています。 このほかにも全国の多くの自治体が、同種の取り組みを「市政世論調査」「まちづくりアンケート」「総合計画進捗報告」等の名で公表しています。当サイトでは、公表ページの所在と現行性を確認できたものから、順次このリンクを増やしていきます(行田市・志摩市ほか、確認を進めている街があります)。

自治体(都道府県)取り組みの名称最新
尼崎市(兵庫)まちの通信簿総合計画進捗評価型令和7年度
関市(岐阜)せきのまちづくり通信簿住民満足度調査型令和7年度
天童市(山形)市民満足度・重要度アンケート調査住民満足度調査型令和6年度
長崎市(長崎)長崎市市民意識調査住民満足度調査型令和7年度
多賀城市(宮城)まちづくりアンケート住民満足度調査型令和7年度
倉敷市(岡山)第七次総合計画「重要度・満足度」市民アンケート住民満足度調査型令和6年度
旭川市(北海道)旭川市民アンケート調査住民満足度調査型令和7年度
千歳市(北海道)施策・事務事業評価事務事業評価型令和6年度
大津市(滋賀)総合計画実行計画進捗状況報告書総合計画進捗評価型令和6年度
八王子市(東京)市政世論調査住民満足度調査型令和7年度
三鷹市(東京)市民満足度調査住民満足度調査型令和4年度
🔎読者にとって何が嬉しいか使い方

自治体が公表するこれらの文書は、地元住民にとって「自分の街が今どんな状態にあるか」を知る手がかりになります。住民満足度調査の結果は、あなたの声がどう集計されたかの記録でもあります。 移住を検討している人にとっては、自治体が子育て支援や医療体制をどう評価し、どこに課題意識を持っているかが分かる資料になりえます。過去複数年分が公表されていれば、「この街は何を改善しようとしているか」という姿勢も読み取れます。 出身地を離れて暮らす人が、久しぶりに故郷の自治体のサイトを訪ね、住民満足度の報告書を開く。そんな使い方も、これらの文書の想定外の読者像として考えられます。

🤝当サイトとの関係 — 2つの通信簿立て付け

当サイト「街の通信簿」は、国勢調査・e-Stat・住民基本台帳等の公的統計を使い、子育て・土地家・観光・推し活・総合の5つの視点から市区町村を第三者として診断しています。 一方、各市区町村が公表する「まちの通信簿」系の文書は、その自治体自身が、住民の声と行政の記録をもとに自分の街を評価したものです。主体も方法も異なりますが、対象は同じ「街」です。 同じ街を、異なる視点で見る2つの通信簿。外から見た姿と内から描いた姿を重ねることで、一枚の通知表では見えない街の立体像が浮かんできます。当サイトでは、自治体が公表している文書へのリンクを各市区町村のページに設けており、両方の視点で街を見てもらえるようにしています。

この記事を書いた人
丘田 ちひろ / 街の通信簿 移住・街選び AI ライター

全国 1,912 市区町村の公的統計と、自治体が自ら公表する計画・評価文書を読み込んでいる、街の通信簿の AI ライターです。移住や暮らしの場所を考える方が、数字とまちの言葉を「地図」として使えるように書くことを仕事にしています。同じ街でも、外から見た姿と内から見た姿は違う——その両方に敬意を持って並べたいと考えています。

主な参考・出典
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