高齢化率45%以上の街は、人が出ていくだけなのか。
— 全国175のうち転入超過は24。ただし、その全てで人口は減り続けている
「高齢化が進んだ街からは、人が出ていくばかりだ」——そう思われがちだ。だが実データを数えると、高齢化率が45%を超える175自治体のうち、直近1年で転入が転出を上回った街が24ある。しかも高齢化の線を40%や50%にずらしても、"人が入ってくる街"はどこでも母数の1割前後しかない。ただし勘違いしてはいけない。その24すべてで、人口はこの5年間、減り続けている。転入超過は「増えている」という意味ではない。丘田ちひろが、24の街の数字を、期待も同情も混ぜずに読む。
この記事の結論(3行)
- 高齢化率45%以上の自治体は全国175。そのうち直近1年で転入が転出を上回った(社会増減率がプラスの)街は24。残る141は転出超過、10はデータ未取得。
- 高齢化の線を40%・45%・50%のどこに引いても、転入超過の街は母数の1割前後(10.5%/13.7%/13.3%)で安定する。特定の街を目立たせるための恣意的な線引きではない。
- ただし24すべてで人口は5年間減り続けている(川場村を除けば3〜6割減)。社会増減率(転入転出)と、出生死亡を含む人口全体の増減は別の指標。転入超過は「人口が増えている」とは違う。
高齢化率45%以上は175。人が入ってくる街は、24しかない
高齢化率が45%を超える自治体は、全国に175ある。そのうち直近1年で転入が転出を上回った街は、わずか24だった。残りの141は転出が上回り、10は社会増減率のデータが取れていない。つまり「超高齢の街には人が来ない」というイメージは、大きくは外れていない。ただし、ゼロではない。
ここで使っている「転入が転出を上回った」という指標は、社会増減率——住民票の異動をもとに、(転入者−転出者)÷人口×100 で計算した、直近1年ぶんの数字だ。プラスなら、その1年で出ていった人より入ってきた人のほうが多かったことを意味する。街の人気投票でも、移住政策の通信簿でもない。ただ、人がどちらへ動いたかの記録である。
この24という数字は、期待を込めて「意外と多い」とも、同情を込めて「たった24」とも読める。どちらの色もつけずに、まず並べてみる。
どこで線を引いても、"人が来る街"は1割前後しかない
「45%以上」という区切りが恣意的に見えるかもしれないので、線を動かしてみた。結果は、どこで引いても「転入超過は母数の1割前後」で、ほとんど変わらなかった。
高齢化率40%以上に広げると446自治体中47が転入超過で10.5%。45%以上なら175中24で13.7%。50%以上まで狭めても60中8で13.3%。分母を倍以上動かしても、人が入ってくる街の割合は1割強のまま安定している。特定の結論に都合よく閾値を選んだわけではない、ということだ。
言い換えれば、超高齢といえる街の10のうち9は、今も人が出ていく側にある。24はその1割の中の、顔ぶれのはっきりした街たちだ。
その24でも、人口は減り続けている
いちばん誤解されやすいところを先に書く。転入超過は「人口が増えている」という意味ではない。24件すべてで、人口はこの5年間、減り続けている。
人口の増減は、①転入と転出の差(社会増減)と、②生まれる人と亡くなる人の差(自然増減)を足したものだ。高齢化率が45%を超える街では、亡くなる方が生まれる子どもを大きく上回る自然減が続く。だから転入が転出をわずかに上回っても、その分をはるかに超える自然減に飲み込まれ、人口全体としては減っていく。(自然減の内訳そのものは本稿のデータには含まないため、ここは高齢化率からの推定である。)
実際、24件の人口はこの5年で、川場村を除けば3割から6割減っている。天川村(奈良県)は-63.3%、金山町(福島県)は-61.1%。転入超過という1年の数字だけを取り出して「増加に転じた」と延ばして読むと、この長い減少をまるごと見落とす。転入超過は、減り方が少しゆるむかどうかの話であって、増加の話ではない。
"何人来たか"に戻すと、多くは数人だった
社会増減率は率(%)なので、人口の小さい街ほど大きく見える。実際の人数に戻すと、24件の顔つきはずいぶん変わる。
率を人口に掛けて概算すると、多いほうから設楽町(愛知県)が約61人、奥多摩町(東京都)が約52人、檜原村(東京都)が約46人、神山町(徳島県)が約35人と続く。二桁の純増があるのは上位10件ほどだ。一方、下のほうは上勝町(徳島県)が約2人、鋸南町(千葉県)や大月町(高知県)は約1人。数世帯の引っ越しで符号がひっくり返る水準で、「転入超過」と胸を張るには弱い。
面白いのは熱海市(静岡県)だ。率は+0.09%と小さく、順位表では下のほうに沈む。だが人口3.4万人の街なので、率を人数に戻すと約30人。率だけを見て切り捨てると、この規模の街の実質的な純増を見落とす。率と人数は、両方を見ないと読み違える。
言説と数字が一致する街は、数えるほどしかない
世間で語られる評判と、転入超過の数字が一致する街もある。ただし、それは例外に近い。24件の大半について、なぜ人が来たのかを、当サイトのデータは説明できない。
サテライトオフィス誘致で知られる神山町(高齢化率54.3%)、ごみを分別して埋め立てをなくす「ゼロ・ウェイスト」の上勝町(同55.9%)は、評判と転入超過が噛み合っている数少ない例だ。それでも神山町の人口はこの5年で58.3%、上勝町は52.7%減っている。「サテライトオフィスの町は活気づいている」で止めず、「それでも人口は5年で半分以下になった」まで並べて、ようやく等身大になる。
残りの街の多くは、理由の裏取りができていない。檜原村や奥多摩町が転入超過なのは、地方移住の成功というより、東京都心から1〜2時間という立地の要素が大きいはずで、高知県や福島県の町村と同じ物差しでは語れない。もうひとつ注意しておきたいのは、高齢化率の高い街に大きな高齢者施設ができると、近隣から入所者の住民票が移ってくるだけで、高齢化率も転入超過も同時に上がりうることだ——「選ばれて人が増えた」ように見えて、中身が違うことがある。だから、転入超過をそのまま「移住政策の成功」と読むのは早い。
川場村だけ、減り方がゆるやかだ
24件のなかで、川場村(群馬県)だけが人口の減り方が際立って小さい。他の23件が5年で3〜6割減るなか、川場村は-10.9%にとどまる。
人口の推移をたどると、3,905→4,085→4,139→3,898→3,480。前半はむしろ増えていて、減少は直近の区間に集中している。データの誤りではなく、山型の実際の動きだ。世田谷区と長く続く交流協定や、道の駅を軸にした集客で知られる村ではあるが、この推移になった理由そのものを当サイトで検証したわけではないので、断定はしない。ただ、24件を「減り方」で横並びにすると、この村だけが違う軌道を描いていることは、はっきり見える。
数字に映らない挑戦も、たぶんある
最後に、この「24」という数字の限界を書いておきたい。これは自治体(市町村)という単位で測れたものにすぎない。もっと小さな、集落ひとつの挑戦は、市の平均に溶けて見えなくなる。
たとえば人口が数人まで減った集落で、誰かが宿を開き、人を呼び戻そうとしている——そういう動きがあっても、その集落を含む市町村全体の数字は、ほとんど動かない。ちなみに「限界集落」という言葉は、本来この集落という単位に対して使う言葉(高齢者が住民の半数を超えた集落を指す)で、自治体まるごとに当てはめる言葉ではない。だから本稿は、24の街に「限界」というレッテルを貼っていない。ただ、高齢化率が45%を超えた街、と数字で呼んでいる。
数字は、街で起きていることの一部しか映さない。それでも、175分の24という事実は、確かに何かを教えてくれる。超高齢というだけで人が来なくなるわけではない。来る街はある。ただし来たからといって、減少が止まるわけでもない。増えた分と減った分を、どちらも同じ大きさで見ること——気になる街があれば、その街のページで、人口の5年推移と社会増減を並べて確かめてほしい。