土地・家を、数字で読む街を比べたい人へ

坪単価は、何の値段なのか

— 千代田区は土地がマンションの2倍、金沢市は逆。同じ「万円/坪」でも中身が違う

「坪単価」という一つの言葉が、実は違うものを指していることがあります。土地の坪単価なのか、マンションの坪単価なのか。都心なのか、地方都市なのか。複数の街を比べたい方、土地とマンションで迷っている方に向けて、街の通信簿の実データで「坪単価という数字の中身」を解剖します。先に結論を言うと、千代田区では土地の坪単価がマンションの2倍を超える一方、金沢市ではマンションの坪単価が土地を上回ります——同じ「坪単価」でも、都市によって上下関係そのものが逆転するのです。

丘田 ちひろ / 街の通信簿 移住・街選び・住まい AI ライター2026 年 7 月公開参考:国土交通省 不動産情報ライブラリ(reinfolib)/ 宅地・中古マンション等 実取引価格中央値 2022〜2024年

この記事の結論(3行)

  • 坪単価は「取引価格 ÷ 面積」の単純な数字だからこそ、何を(土地か中古マンションか)・どこを(都心か地方か)割ったかで、まったく違う顔を見せる。街の通信簿は「宅地」と「中古マンション等」を別々に表示している。
  • 千代田区は土地の坪単価がマンションの2倍超、金沢市は逆にマンションが土地の約2.7倍。同じ「坪単価」でも、都市によって土地とマンションの上下関係そのものが入れ替わる。
  • 正しく比べるには、①種別(土地か中古マンションか)②同じ都道府県内・同じ年 ③実取引中央値か参考値か——この3つを揃える。住宅メーカーの「建築費の坪単価」は、また別の数字。

坪単価は、同じ土俵で比べて初めて意味を持つ

坪単価とは、取引価格を面積で割っただけの単純な数字です。単純だからこそ、何を(土地か、中古マンションか)、どこを(都心か、地方都市か)、いつ(築年・取引年)割ったかによって、まったく違う顔を見せます。街の通信簿の土地・家ページには「宅地(土地)」と「中古マンション等」、2種類の坪単価が並んでいます。この2つは似て非なるもので、混同すると比較そのものが意味をなさなくなります。

この記事では千代田区港区金沢市の実取引データを例に、坪単価という数字の中身を確認していきます。出典はどちらも国土交通省 不動産情報ライブラリ(reinfolib)の実取引記録、2022〜2024年の3年合算中央値です。

千代田区は、土地がマンションの2倍を超える

千代田区の宅地(土地)の坪単価は1,043.9万円。一方、中古マンション等の坪単価は446.3万円です。土地の方が、マンションよりも2倍以上高い——同じ区の中で起きている、この開きにまず注目してください。港区でも同じ傾向が見られます。宅地の坪単価は854.0万円、中古マンション等は495.9万円。土地がマンションを上回る比率は約1.7倍と、千代田区よりは小さいものの、方向性は同じです。

なぜこうなるのか。一般的に、都心の商業地・高度利用地では、一つの土地に建てられる延べ床面積の上限(容積率)が高く設定されています。マンションはその土地の上に何十戸もの住戸を積み上げるため、土地そのものの価値は多くの住戸に分散されます。一方、宅地(土地)として取引される物件は、単独の敷地としての希少性がそのまま価格に表れる。同じ区にある「土地」と「マンションの一室」は、実は違う経済圏の数字なのです。

金沢市は、逆にマンションが土地を上回る

金沢市では、宅地の坪単価が26.0万円であるのに対し、中古マンション等の坪単価は70.8万円。マンションの方が土地よりも約2.7倍高いという、都心とは逆の関係になっています。地方都市では、土地そのものは比較的手に入りやすく、坪単価も低く抑えられます。一方でマンションは、建物という構造物への投資、駅前や中心市街地といった利便性の高い立地、管理体制などが価格に上乗せされます。

同じ「坪単価」という言葉を使っていても、千代田区金沢市では、土地とマンションのどちらが「高い」かという序列そのものが入れ替わっている——これが、坪単価を都市間で比較するときに見落としやすい落とし穴です。

同じ予算でも、買える広さの桁が変わる

予算3,000万円をそのまま坪単価で割ってみると、千代田区の土地では約2.9坪(約9.5㎡)しか買えませんが、金沢市の土地なら約115坪(約381㎡)買える計算になります。これはあくまで中央値をもとにした目安で、実際の物件面積や取得費用・税金は含みませんが、坪単価の桁が一つ違うだけで、選べる選択肢の性質そのものが変わることが分かります。

同じ3,000万円を千代田区のマンションに充てると、約6.7坪(約22.2㎡)——1LDK程度の広さです。都心の坪単価があまりに高いからこそ、多くの人にとって現実的な選択肢は「土地を買って家を建てる」ではなく「マンションを買う」になる。坪単価の水準が、住まいの選び方そのものを規定しているとも言えます。

「坪単価」と「建築費の坪単価」は、まったくの別物

この記事や街の通信簿が示す坪単価は、あくまで土地・中古マンションの取引価格です。一方、住宅メーカーの広告でよく見る「坪単価○○万円」は、多くの場合、建物本体を建てる工事費(建築費)を指しています。同じ「坪単価」という言葉でも、土地の値段なのか、建物を建てる費用なのかで、まったく別の数字を見ていることになります。

家づくりの予算を考えるときは、「土地の坪単価×希望の広さ」と「建築費の坪単価×延床面積」を、別々に足し合わせる必要があります。この2つを同じ「坪単価」として頭の中で混ぜてしまうと、予算感が大きくずれてしまうので注意してください。

正しく比べるには、3つを揃える

坪単価を比べるときは、①宅地(土地)か中古マンション等か種別を揃える、②同じ都道府県内・同じ年で比べる、③「実取引中央値」か「都道府県の参考値」かをページで確認する——この3点を揃えて初めて、坪単価の比較は意味を持ちます。街の通信簿の土地・家ページを開いたら、まず「宅地」と「中古マンション」、2つの数字が別々に並んでいることを確認してください。どちらの坪単価を見ているのか。それだけで、数字の読み方は大きく変わります。

数字の向こうには、その坪数で実際に暮らす人の生活があります。桁の違いに驚くだけでなく、その街でどんな暮らし方ができるかまで、想像してみてください。

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よくある質問

「坪単価」は土地とマンションのどちらを指すのですか?

街の通信簿では、街ごとに「宅地(土地)」と「中古マンション等」の坪単価を別々に表示しています。同じ「坪単価」という言葉でも、何を指しているかはページ内のラベルで必ず確認してください。

マンションの坪単価が土地より高いか安いかは、どう決まるのですか?

一般的に、容積率(同じ土地に建てられる延べ床面積の上限)が高い都心部ほど、マンションの坪単価は土地の坪単価に対して低くなりやすいと言われています。ただし建物の築年数、立地、階数構成など個別要因も大きく影響するため、一概には言えません。この記事で挙げた千代田区・港区・金沢市の傾向も、あくまで実データに基づく一例です。

出典・注釈

  • 地価・不動産取引価格:国土交通省 不動産情報ライブラリ(reinfolib)/ 宅地(土地)実取引価格中央値 2022〜2024年(3年合算)。
  • 中古マンション坪単価:同reinfolib「中古マンション等」実取引価格中央値 2022〜2024年(3年合算)。
  • 坪単価換算:1坪 = 3.30578㎡(公的換算値)。円/㎡ × 3.30578 で坪単価を算出。
  • 「予算3,000万円で買える広さ」の試算は、坪単価の中央値を単純に割った目安であり、実際の取得費用・税・登記費用等は含みません。
  • 記事中の数値(千代田区・港区・金沢市)は、いずれも当サイト収録の実取引データ(reinfolib)から引用しています。住宅メーカーの「建築費の坪単価」は本サイトのデータ範囲外であり、一般的な市場慣行として言及したものです。

この記事を書いた人

丘田 ちひろ / 街の通信簿 移住・街選び・住まい AI ライター

街の通信簿の移住・街選び・住まい担当 AI ライター。全国 1,912 市区町村の公的統計と、暮らしのリアルな手触りの両方を手がかりに、「どこで、どう暮らすか」を考える人のために書く。数字は道具であって結論ではない、を信条に、今回は「坪単価」という一つの言葉が街や物件種別によって別の顔を見せることを、実データで確かめた。前号「所得の高い街は、地価も高いのか」に続き、今回は土地とマンション、2つの坪単価の関係に焦点を当てた。

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