子育て指標の読み方街選びの前に読む

幼稚園が一つもない自治体が、六百三十五ある。

— ただし、その九割六分は保育所が受け止めている

幼稚園数が分かる 1,903 自治体のうち 635、実に 3 自治体に 1 つで幼稚園が 0 園だ。「幼稚園がない」と聞けば就学前教育の空白地帯を思い浮かべがちだが、そのうち 607 自治体には保育所がある。長野県飯田市は幼稚園 0 園だが、保育所は 39 か所。人口 9 万人を超える街でも、子どもを預ける場所の「主流」が幼稚園ではなく保育所という自治体は珍しくない。丘田ちひろが、その中身を分けて読む。

丘田 ちひろ / 街の通信簿 子育て・街選び AI ライター参考:文部科学省「学校基本調査」等に基づく幼稚園数・保育所数/総務省「住民基本台帳」(人口・出生率・高齢化率)/こども家庭庁(待機児童数)/街の通信簿 独自集計(対象 1,903 自治体・2026年7月24日時点)

この記事で分かること

  • 幼稚園が 0 園の自治体は 635、集計対象 1,903 自治体の 33%。ただしそのうち 607 自治体(95.6%)には保育所があり、幼稚園も保育所も無いのは 28 自治体にとどまる。
  • 長野県飯田市(人口 9 万 8,164 人)は幼稚園 0 園だが保育所 39 か所。高砂市・大仙市・燕市・たつの市も人口 7 万人台で幼稚園 0・保育所 19〜27。街によって「就学前の子どもをどこで預かるか」の主流が違う。
  • したがって幼稚園の数だけで街を比べる意味は薄い。ただし当サイトは認定こども園の数を保持していないため、就学前施設の全体像はこのデータだけでは確認できない——その限界も併せて示す。

幼稚園ゼロは 635 自治体——だが、その九割六分に保育所がある

幼稚園が 1 園もない自治体は 635、集計対象 1,903 自治体の 33% にのぼる。ただしそのうち 607 自治体(95.6%)には保育所があり、「幼稚園も保育所もない」自治体は 28 にとどまる。

「幼稚園が 0」という数字だけを見ると就学前教育の空白を疑いたくなるが、実態はそうではない。保育所そのものが 0 の自治体は 47 しかなく、幼稚園がない自治体の大半は保育所という別の受け皿を持っている。3 自治体に 1 つで幼稚園がない——その裏にあるのは「幼稚園がない街」ではなく、「幼稚園という形では数えられない街」だ。

飯田市は幼稚園 0 だが保育所 39——街によって主流の預け先が違う

長野県飯田市(人口 9 万 8,164 人)は幼稚園 0 園だが、保育所は 39 か所。就学前の子どもをどこで預かるかの「主流」は、街によって幼稚園と保育所のどちらかに大きく偏る。

飯田市に限った話ではない。兵庫県高砂市(人口 8 万 7,722 人)は保育所 19、秋田県大仙市(7 万 7,657 人)は 24、新潟県燕市(7 万 7,201 人)は 23、兵庫県たつの市(7 万 4,316 人)は 27——いずれも幼稚園は 0 園のまま、人口 7 万人を超える規模の街が保育所だけで就学前の子どもを支えている。

これらの自治体は、過疎で幼稚園が消えたわけではない。人口規模から見れば街として十分に機能しており、もともと幼稚園という形態をほとんど持たずに保育所中心で子育ての場を組んできた、と見るほうが実態に近い。

人口あたりで見れば、幼稚園 0 の地方都市が大都市を上回ることもある

出生率が 6‰ を超える自治体でも幼稚園ゼロは珍しくない。しかも人口 1 万人あたりの保育所数で見ると、大都市より高い水準の街がある。

長崎県雲仙市(人口 4 万 1,096 人・出生率 6.08‰)は幼稚園 0 園だが保育所 27 か所で、人口 1 万人あたりの保育所数は 6.57。岩手県久慈市(3 万 3,043 人)は 6.05、鳥取県倉吉市(4 万 6,485 人)は 5.38。いずれも幼稚園はゼロのまま、人口あたりの保育所数では横浜市(保育所 2.4・幼稚園 0.6)を上回る。

幼稚園と保育所の両方が揃う大都市のほうが選択肢は多い。それは事実だ。ただ「人口あたりの受け皿の厚さ」という一点で見れば、幼稚園 0 の地方都市が見劣りするとは限らない。

だから幼稚園の数で街を比べる意味は薄い——ただしデータにも限界がある

幼稚園の数だけで街の子育て環境を比べることには意味が薄い。本当に見るべきは幼稚園・保育所・認定こども園を合わせた就学前施設の総数だが、当サイトが持つのは幼稚園数と保育所数までで、認定こども園の数は保持していない。

幼稚園 0 園の自治体の多くが保育所で就学前の子育てを支えている以上、幼稚園の有無を単独の指標として街を比較すると、実態より不利に見える街が大量に生まれる。かといって「幼稚園+保育所」の合計で完結とも言えない。近年は幼稚園と保育所の機能を併せ持つ認定こども園への移行が進んでいるとされるが、当サイトはその施設数を保持しておらず、幼稚園 0・保育所少なめに見える自治体の一部が実際には認定こども園でカバーされている可能性を、このデータだけでは確認できない。

数字が語れる範囲と、語れない範囲がある。今回のデータで言えるのは「幼稚園という数え方では 0 になる街が 3 分の 1 ある」ことと「その大半に保育所がある」ことまでだ。

幼稚園も保育所も 0 の 28 自治体は、また別の話

幼稚園・保育所のどちらも 0 という自治体は 28 にとどまり、人口 1 万人を超える自治体は 1 つもない。大半は人口規模がごく小さく、近隣自治体の施設に頼る前提で成り立っていると見られる。

群馬県上野村(人口 1,128 人)、山梨県小菅村(684 人)、奈良県野迫川村(357 人)、東京都青ヶ島村(169 人)——いずれも人口が四桁に届くかどうかの規模だ。就学前の子どもを預ける施設そのものを自前で持たない前提で、街づくりが成り立ってきた自治体である。幼稚園 0 だが保育所はある 607 自治体とは、明らかに別の話として扱う必要がある。

なおこの 28 自治体には、原発事故による避難で人口構成が大きく変わった自治体も含まれている。そうした街の数字を、人口規模を理由に施設を持たない自治体と並べて論じることはできない。同じ「0」でも、そこに至った事情はまったく違う。

「0」という数字は目を引く。だが街を選ぶときに知りたいのは、0 かどうかではなく、その 0 の先に何があるかのほうだと思う。

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