県内ランキングは、何を教えてくれるのか
— 滋賀県18市町村の実取引データで読む「順位」の中身
「うちの市は県内で何位」——その順位、そのまま信じていいのでしょうか。県内での住み替えや、地元に戻っての家探しを考えている方に向けて、順位の"正しい読み方"を滋賀県の実データで整理します。先に結論を言うと、順位は「価格の座標」であって、街の通知表ではありません。
この記事の結論(3行)
- 県内ランキングは「同じ県内で、実取引価格がどの水準か」を示す座標軸。優劣の通知表ではない——県庁所在地の大津市が4位、が良い例です。
- 順位より先に「取引件数」を見る。件数がひと桁の街(例:多賀町)の順位は、数件の取引で大きく揺れます。
- 「○位」だけでなく「○市町村中か」(母数)を必ず確認する。滋賀県の母数は19ではなく18です。
まず結論——順位は「価格の座標」、通知表ではない
県内ランキングが教えてくれるのは、「同じ県内で、実取引価格がどの水準か」だけです。街の良し悪しではありません。街の通信簿の「県内○位 / ○市町村」は、同じ都道府県内で実取引データが十分にある市区町村を、宅地中央値(円/㎡)の高い順に並べたもの。出典は国土交通省 不動産情報ライブラリ(reinfolib)の実取引記録です。
この記事では滋賀県を例に、順位を読み間違えないための3つのポイント——①順位の意味 ②取引件数 ③母数——を、実データで確認していきます。
1位の草津市が教えてくれること
滋賀県の1位は草津市。理由は明快で、「県内で最も買い手が競っている街」だからです。宅地中央値は2022年8.8万円/㎡→2024年13.1万円/㎡、3年で約49%上昇。取引件数も毎年100件超(138→152→122件)。価格と件数が同時に強い——需要の強さがそのまま順位に表れています。
2位は栗東市(2024年 9.1万円/㎡)、3位は守山市(同 8.3万円/㎡)。上位3市はすべて琵琶湖南岸の「湖南エリア」に固まっています。京阪神への近さと宅地開発が重なった結果で、県内ランキングの上位には、こうした地理的なまとまりがはっきり現れます。
県庁所在地の大津市が、4位である理由
県庁所在地・人口34.5万人と県内最大の大津市は——4位です。順位は「街の格」ではなく「取引価格の水準」で決まるから、こういうことが普通に起きます。
大津市は市域が広く、市街地から山間部までの取引が中央値にすべて混ざります。一方の草津市や守山市は市域がコンパクトで、宅地開発エリアの取引が中央値に色濃く反映される。人口・知名度と順位は一致しない——これが県内ランキングの最初の落とし穴です。
順位より先に「取引件数」を見る——彦根市と多賀町
順位の数字を信じる前に、取引件数を見てください。件数が少ない街の順位は「揺れ」ます。
県内中位の彦根市は、2024年5.0万円/㎡・85件。2022年(3.2万円/㎡・151件)から価格は約57%上がりましたが、件数は151→115→85件と減少中です。彦根城の城下町という知名度と、坪単価の順位は別物——それでも年間85件あれば、中央値の信頼性は十分です。
極端な例が多賀町。中央値は0.9万→3.9万→5.0万円/㎡と、3年で5倍以上に見えます。しかし件数は11→7→4件。ひと桁の取引では、たまたま売れた数件の土地の性質(立地・面積・条件)で中央値が跳ねます。これは町全体の急騰ではなく「揺れ」です。順位だけを見ると、実態以上の変化があったと誤読してしまいます。
順位が低い=ダメな街、ではない——豊郷町
順位の最後尾にも、ちゃんと暮らしがあります。豊郷町の宅地中央値は2024年1.5万円/㎡で県内下位。件数も12→2→10件と波が大きく、この順位自体、固定的なものではありません。
豊郷町は近江商人ゆかりの旧豊郷小学校校舎群で知られる、歴史とコミュニティの町です。そして地価が低いことは、「同じ予算でより広い土地が持てる」という現実的な選択肢でもあります。順位は価格の座標であって、暮らしの質の採点ではない。ここは書き手として、何度でも強調しておきます。
「何位」より「何市町村中か」——母数を確認する
「県内○位」を見たら、必ず分母を確認してください。滋賀県は19市町村ありますが、ランキングの母数は18——甲良町は実取引データが十分に確認できず、対象外だからです。
同じ「5位」でも、母数10なら中位、母数30なら明確な上位。意味がまるで違います。街の通信簿は「○位 / ○市町村」と必ず母数を併記していますので、順位と分母をセットで読む習慣をつけてください。
明日から使える、3ステップの読み方
使い方は3つだけ。①順位と母数を見る ②隣の順位の街のページも開く ③取引件数を確認する。栗東市が気になるなら守山市・草津市も、彦根市が気になるなら長浜市・東近江市も開いてみる——県内ランキングは、「もう少し価格帯の違う街」を発見する地図として使うのが、一番役に立ちます。
そして最後の判断基準は、順位ではありません。実家からの距離、通勤・通学の条件、あなたがその街でどう暮らしたいか。順位は入り口、出口はあなたの暮らしです。